典座ネット〜お供え膳をつくろう

大切な故人に手作りの精進膳を供えてみませんか

精進料理お供え膳の基本

      2015/08/25

○精進料理お供え膳の基本作法

この作法は、お盆だけでなく、お彼岸やお正月、故人の命日や年回法要などお供えの仏膳すべてに共通する作法です。

○一汁三菜の並べ方

当地に古くから伝わるお膳の献立を例として解説します。
下の写真はいわゆる一汁三菜の形式です。
(ご飯と漬け物を数に加えず、汁が一種とおかず3品)

お盆のお供え膳並べ方の基本

一汁三菜形式であれば、形が調った格式の正式なお膳としていつでもお供えすることができます。

なおこれにあと2品おかずを増やしたのが一汁五菜形式で、お葬式などの際に実際に会葬者にお出しする場合で、よりていねいな形でおもてなししたいと喪主が考えた場合に用意します。

○一汁五菜の並べ方

お盆のお供え精進料理膳の基本

なお、さらに二の汁(別汁)としてけんちん汁が付くと、二汁五菜のフルセットになります。当地では格式の高い葬儀の際は、この二汁五菜のお膳が作られて御霊前にお供えされ、また遺族会葬者もともに口にしていました。

・飯椀  白飯
・汁椀  絹豆腐のすまし汁 三つ葉きざみ
・漬物皿 キュウリとナスの浅漬
・平皿  がんもどき、結び昆布、いんげんの煮物
・膳皿  大根、人参、キュウリ、薄揚の胡麻あえ
・つぼ  ひじき
・猪口  煮豆
・小皿  きんぴらゴボウ

どれだけの品数を用意するかは事情によりかえて良いのですが、ここで一汁五菜の精進料理お供え膳の並べ方を解説します。一汁三菜、一汁二菜形式の場合はここからおかずの数を減らすだけなのですぐに対応できるでしょう。

一汁五菜精進料理配膳図

お盆のお供え膳_お椀の並べ方

昔は精白米が貴重だったため、仏膳では白ご飯が最高のもてなしとなっています。しかし今の時代ですから混ぜご飯など味のついたものでもよいでしょう。
平皿に煮物、膳皿にあえもの、小皿に炒め物を盛りつけるのが基本です。
なお上記は当地の基本的な仏膳の例であり、別の献立でもかまいません。

お供えする際に注意するのは、箸の方(ご飯と汁の側)が自分とは逆側、つまり仏さまの側を向けることです。ほとけさまが食べるわけですから、仏さまの方に、箸とご飯が向くようにお供えします。

お膳の並べ方は写真を参考にしてください。
なお、こうした漆塗りのお膳がない場合は、瀬戸ものなど、普段使っている食器でもかまいません。

○一汁三菜の精進料理膳お供え膳

お盆のお供え膳並べ方の基本

一汁三菜の場合は、上の写真のように、通常はつぼのひじきと猪口の煮豆を除いて、平皿の煮物、膳皿のあえもの、小皿の炒め物の三品にします。
(上の写真は、見やすいようにこちら側を向けて撮りましたが、上記のように仏さまの側にご飯を向けてお供えします)

○市販の仏膳セットを用意しましょう

上記のお膳は私たちが食べるのと同じ大きさの漆膳ですが、現在はなかなか一般家庭では使わないでしょうし、また本式のお盆棚でなければ広さが足りずお供えできません。仏壇前に簡易的なお盆棚を用意する場合などには、仏膳専用のうつわセットが仏具店などで市販されていますので一組購入しておくと良いでしょう。
これがあれば、お盆以外にも、命日や年回法要、お彼岸のお供えなどに使用できて便利です。

仏膳

このセットは、むかしながらの漆塗りの高級タイプが二万円前後、プラスチック製のものは二~五千円程度で売られています。色も黒、赤、写真の溜塗り風、あるいは外側が黒で内側が赤というものも売られています。写真のように、唐草模様の蒔絵装飾が施された高級仕上げのものもあります。

色の決まりは奥が深いのでここでは簡単に説明しますが、一般家庭なら黒を買っておけば良いでしょう。あるいは溜塗り(茶色)なら、お祝いのお供えのときにも使えます。(別に黒をお祝いのお供えに使っても良いのですが)

色よりも、お膳選びには大きさが大切です。
五寸から九寸くらいまでのものが売られています。これはお膳の台の一辺の長さです。五寸は約15センチ、九寸は約27センチです。ご自宅の仏壇の大きさに合わせたものを買わないと、置けなくなってしまいます。
かといって小さすぎると、料理が盛りつけにくくなります。写真のお膳は七寸(21センチ)ですが、これなら一般的な仏壇にちょうどよいと思います。
ただ、それでも漬物や煮物をみればわかるように、うつわに合うように小さく切り直す必要があります。

 

○仏膳に付属する並べ方説明には疑問あり

市販の仏膳セットを購入すると、だいたい飯椀、汁椀、平椀、つぼ、高杯(たかつき)の五種のお椀と、高杯をのぞく四種のお椀のふた、計九枚がセットになっています。
フタはフタとして使っても良いのですが、漆のお椀の作法だとフタも裏返して皿として使うのが民間の古い作法です。
このフタを含めた九枚を総じて「九重椀(ここのえわん)」と呼びます。

お盆のお供え膳のならべかた
上の写真は、わかりやすいように上記の黒い漆膳と同じ一汁三菜を、同様のお椀に盛りつけた写真です。
漬物はご飯のフタ、きんぴらは平椀のフタに盛っています。
また、おかずの配置の作法もいろいろあるのですが、基本的にご飯の対角線上に、おかずの中で一番大きな直径のうつわを置くことになっているので、(右手でとりやすいように)この場合は平椀を右奥に置いています。

余談ですが、市販の仏膳セットに付属する並べかた説明書ですが、私は問題があると思っています。というのも、和食では漬物は必ずそえられるものとしておかずの数に含めない決まりがあるのですが、(ご飯も同様で数に入れない)仏膳セットのならべかた説明書は漬物をおかずとして加えて表記しているので混乱してしまうのです。つまり説明書のとおりだと一汁二菜形式(おかず2品)となってしまい、いわば略式のふだん用のお膳形式になり、正式な場でのお供えには不都合なのです。

あくまでも実際に食べるお膳と同じものを仏膳に盛るのが基本なので、食べるお膳と同じ数のお椀をほとけさまにも用意するべきなので、市販の仏膳を使う場合はフタを一枚ひっくり返して皿として使うことで、一汁三菜の6種類を盛るようにします。

また市販のお膳セットに付属する並べ方の図は実際のお椀と、仏膳のお椀の形状が違う場合が多いのでそのまま配置するとおかしくなることが多いのです。

良く問い合わせを受けますが、メーカーの図は私には責任はありません。

結論から言えば、ご飯、漬物、汁の配置場所は確定しているのですが、おかず3品の置き場所はお椀の形状と盛るおかずの種類によって換えてかまいません。

お盆のお供え膳

お盆のお供え膳のならべかた

上記の二枚の写真のように、おかずの置き場所は換えてもかまいません。

またおかず5品の「一汁五菜形式」の場合の例は以下の写真です。

お盆のお供え膳

いずれにせよ、お膳の配置方法の原則は長くなるのでまた別の機会に説明したいと思います。

ところで、お供えの場合は味の上手下手は問題ではなく、手作りで一生懸命こころをこめて作ることが大切なのですが、まあせっかく作るのですから美味しい方がいいのは間違いありません。
そこで、ここでは一汁三菜形式のお供えの基本となる三つのおかず、つまり「きんぴらゴボウ」、「胡麻あえ」「がんもどきの煮物」のレシピをご紹介します。

この3品を作ることができれば、お供え膳で困ることはないでしょう。

○がんもどきの煮物

がんもどきの煮物

1 鍋に水400mlを入れ、薄い種類の昆布5gを浮かべて5時間ほどおく。
2 がんもどき(一つ40g)に熱湯を10秒ほどそそぎ、油抜きをする。
3 いんげん100gのヘタをとりのぞき、食べやすい長さに切る。
4 1の昆布を包丁やキッチンはさみで細長く切る。
5 1の鍋に2、3、4を入れ、酒50ml、みりん30ml、砂糖5ml、しょうゆ20mlを加えて中火で15~20分煮る。途中、がんもどきをひっくり返す。
6 火を止め、10分ほどそのままおいて味をなじませる。
昆布をはしでつまんで鍋から出し、結びめをつくって結び昆布にする。
がんもどきは十字の切れ込みを入れる。
☆がんもどきの替わりに厚揚げでも良いでしょう。添える野菜は、季節のもので手近にあるものを選んでください。

 

○きんぴらごぼう

きんぴらごぼう

1 ゴボウ100gを布たわしでこすって泥を落とし、千切りにして水に10分ほど漬ける。
2 人参50gを同様に千切りにする。(皮はむかなくても良い)
3 フライパンを熱して油5~10mlを敷き、水を切った1と2を強火で炒める。
油が回ったら砂糖5ml、しょうゆ15mlを加え、1~2分炒めたらみりん15mlを加えて水分がなくなるまで炒めて火を止める。
4 好みで一味唐辛子やすり白胡麻をまぶす。
☆みりんを加える前は、焦げそうな場合は中火に落としても良いですが、みりんを入れたら強火で一気に水気を飛ばします。そうするとおいしそうなテカリがついたシャキッとしたきんぴらになります。仕上げだけでも強火でないと、ジットリしなしなの歯ごたえない仕上がりになってしまうのでご注意下さい。

 

○大根と胡瓜の胡麻あえ

大根と胡瓜の胡麻あえ

1 良く洗った大根200g、人参100g、胡瓜100gを短冊切りにする。
2 1をボールに移し、塩2mlをまぶして軽く混ぜ、3分ほどおいてよくもんで柔らかくする。
3 すり鉢か小型のフードプロセッサーに白ごま30mlを入れ、小鍋で酒15ml、
みりん10ml、砂糖2ml、しょうゆ5mlを煮立てて加え、よくすりあげる。
胡麻がすれてきたら米酢15mlを加えてさらにすりあげる。
4 2を手で軽くしぼって水気を切り、クッキングペーパーで拭いてから3とあえる。
☆人参以外は、あまり薄く切りすぎると歯ごたえない仕上がりになるので、大根と胡瓜はある程度厚みがあった方が良いでしょう。

 

○作法を通じて表すべきこと

こうしたお盆の作法を紹介した本やネット情報は、ある程度おおざっぱな解説はあるのですが細かい点まで踏み込んだものはあまりありません。それは地域や宗派、あるいは住職の流儀によってさまざまな作法があるため に、なかなか模範的な作法を紹介しにくいからです。うちのお檀家さんの中でだけでも、地区が違えばお供えの仕方が違いますから。曹洞宗の公式な印刷物をみ ても、細かいところはぼやかしてある場合がほとんどです。

ですが、準備をする側としては細かいところまで書いてくれないと困ってしまいますよね。
そのため、あえて今回、批判を怖れずに、うちの寺で基準となっている当地での作法を紹介しました。この作法であれば、おそらく全国的にみてもほぼ通用す ると思いますが、中には「いやいや、うちの方ではご飯はもっと山盛りにします」「あれ、うちの地域のお盆棚とだいぶ違うな」という部分も当然あるでしょ う。そういうときには、地元の風習や作法を優先させてください。

あくまでも一つの参考として御理解いただき、詳しくはお近くの寺の住職や、地域の古老に確認すると良いと思います。あるいは私の著書『典座和尚の精進料理』にも解説が掲載してありますので是非手にとってご参照ください。

さて、お盆のお供えの作法をご紹介しましたが、こうした昔ながらの作法は、残念ながら少しづつ姿を消しつつあります。もちろん、時代に応じて変えていくべき作法もあると思いますが、ほんとうに意義深い作法はながく伝えていくべきだと思います。
「忙しいから・・・」と安易に手抜きするのではなく、忙しい中、あえて手間をかけて準備や料理をすることにより、亡き人への感謝やいのちの尊さに気がつくことが大切です。

亡くなった人の気持ちになってみてください。お盆になつかしいわが家に帰ってくるのを楽しみにしていたはずです。
ようやくわが家にもどってみれば、お盆棚の用意もしていないし何のお供えもないのではがっかりするでしょう。
遺族が手間をかけていろいろな用意やお供えものをしてくれて、みんなでにぎやかに迎えてくれたら、それは亡き人のたましいにとって最高のお盆ですよね。
ぜひ、故人への恩返しだと思って、自分のできる範囲でかまいませんから、お盆のお供えをしてみませんか。

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