典座ネット〜お供え膳をつくろう

大切な故人に手作りの精進膳を供えてみませんか

お盆の基礎知識と飾り付けの基本

      2015/08/25

○当記事は上毛新聞オピニオン21 平成21年8月11日掲載の拙稿
「お盆に手作りの記事を~竜宮の椀が伝える心~」との誌面・ブログ・コラボレーション記事です。
(無断転載を固く禁じます)

○お盆の準備をしましょう

お盆のお供えのしかた

暑さがきびしくなってくると、間もなくお盆の時期になります。
お盆にはあの世に旅立った亡き人のたましいが、懐かしいわがやに帰ってきます。
当地では8月13日にお墓参りをして自宅の庭先に迎え火を焚き、各家庭で亡き人をお迎えする儀式を行い、16日の朝にふたたび送り火を焚いてお墓にお連れしてお見送りするのが一般的です。
つまり、3泊4日の日程で、亡くなったご両親やおじいちゃんおばあちゃん、ご先祖さま方の魂を自宅にお迎えし、ゆっくりしていってもらうのです。わかり やすく言えば、この世で暮らしている私たちが、あの世からやってきた亡き人のたましいを、お客さんとしておもてなしをするのです。
このおもてなしが、いわゆる「お盆の供養」です。

○お盆棚を用意します

お盆棚、お盆飾りの一例

家庭でのお盆棚飾りの一例

ご家庭でのお盆飾りの一例
さて、ではどうおもてなしすれば良いのでしょうか。
生きているお客さんをお迎えする場合には、まずお通しする客間を掃除して、机や座布団の用意をしますよね。
同じように、まずはお迎えするご先祖さまにゆっくり休んでいただく場所を用意しなくてはいけません。
当地では「お盆棚(おぼんだな)」と呼ぶ祭壇を自宅の奥間に用意する伝統が伝えられています。
「精霊棚(しょうりょうだな)」「施食棚(せじきだな)」などと呼ぶ地域もあります。
お盆棚は、むかしは近所の大工さんなどに作ってもらったり、竹で自作したのですが、現在は仏具店や農協などで組み立て式の便利なセットが売られています。

自宅の都合などで大きなお盆棚が用意できない場合は、仏壇の前に小さな机を置き、その上にゴザや畳の上敷きを敷いて似た感じに仕上げると良いでしょう。

上の二つの写真は、古式通りに準備したお檀家さん宅のお盆棚です。
写真のように、お盆棚の上に畳の上敷きを敷き、前方または四隅に笹つきの竹をひもで結んで立てます。竹の上方をなわで結んで結界を作り、なわにキレイな花を挿して吊す場合もあります。
お墓参りに使用した盆提灯(ぼんちょうちん)があればお盆棚の上方などにひっかけて吊すなどします。

お盆棚の奥の方に、十三仏や曹洞宗三尊仏などの掛軸、位牌、故人の遺影などを安置します。掛軸や遺影は無くてもかまいませんが、位牌は必ず安置してくだ さい。仏壇にたくさん位牌がある場合は、すべて横に並べます。順番は、中央が「○○家先祖代々」で、あとは中央に古い位牌から順に置くと良いでしょう。な お、2枚目の写真のように、位牌の上部がフタのようになっていて外せるもの(繰り出し位牌)は、中に戒名が書かれた木札がたくさん入っているので、これを 取り出して横に並べる方法もあります。
なお、特に仏具の配置については、地域の慣習や住職の指導を優先して下さい。

○キュウリの馬とナスの牛

次にお盆棚に用意して欲しいのは、ナスとキュウリで作った牛と馬です。
割り箸をキッチンばさみで半分に切って、四カ所に刺して手足にします。あるいはマッチ棒を刺しても良いでしょう。

キュウリが馬で、ナスが牛です。そのため、キュウリにはしっぽをつけます。写真のようにとうもろこしの先端の毛の部分を、短く切ったようじや割り箸にからめてキュウリのお尻の部分に差し込んでしっぽを作ります。

お盆棚の飾り きゅうりとナスの馬と牛

お盆飾り きゅうりとナスの馬と牛

ご先祖さまが家にやってくる際は、少しでも早く来て欲しいので足の速いキュウリの馬に乗り、お盆が終わってあの世に帰る時には、なるべくゆっくり帰って 欲しいので、足が遅いナスの牛に乗って・・・という、私たちのご先祖さまが考え出したやさしい気持ちがこめられた作法です。

なんでも理屈で考えてしまいがちなせせこましい現代だからこそ、こうした心暖まるほのぼのとした作法を守っていきたいものです。牛と馬に見えるような形のキュウリとナスをあれこれ選ぶのも楽しいものですよ。

○すべての精霊に捧げる水の子

そして次に用意するのは「水の子(みずのこ)」です。
1 お米50ml(1/4カップ)を軽く研ぎます。
2 ナス10g、人参20g、キュウリ20gをサイコロ切にして1のに混ぜ、水気を含ませてうつわに盛ります。

お盆の飾り みずのこ
☆ハスの葉を下に敷くと良いのですが、なかなかハスの葉は入手できないので、フキの葉や里芋の葉など似た感じの葉で代用します。最近は樹脂製のハスの葉に似せた敷物が販売されているのでそれを利用しても良いでしょう。
☆混ぜる野菜はこの3点に限りません。とうもろこしの粒などを混ぜても良いです。ナスは、色が変わりやすいので、少なめにするとキレイです。

 

この水の子をお供えする理由はいろいろな説がありますが、要するにたくさんのご先祖さまをお迎えするわけですから、皆さんに行き渡るように、こうしたたくさんのお米や野菜の粒をお供えするのだと理解すれば良いでしょう。

自分がこの世に生を受けたのは、お父さんとお母さんのおかげです。お父さんとお母さんには、そのまたお父さんとお母さんがそれぞれいますから、2代前に は4人のおじいちゃんおばあちゃんがいるわけです。同じように10代さかのぼると、1024人のご先祖さまがいて、20代さかのぼると100万人のご先祖 さまがおられるのです。

お盆は、そうした数多くのご先祖さまに感謝する期間でもあります。ご先祖さまあってこその自分であることと、長い歴史の中で受け継がれてきたいのちの重みと大切さをあらためて再認識しなくてはいけません。

そんなたくさんの亡き人のたましいをお迎えするにあたり、みなさんそれぞれに行き渡るように・・・というこれも優しい気持ちがこめられているのです。

また、中には家が絶えてもう誰も供養してくれなくなった無縁の霊や、事情でお盆に呼んでもらえないたましいなどに対しても、広く供養してこの水の子を召 し上がってもらうという意味もこめられています。自分の家のご先祖さまだけで良いという狭い心ではなく、すべての亡き人に捧げるという布施のこころを忘れ てはいけません。

○その他の準備

そして、きれいなお水をうつわやコップなどに入れておそなえします。お盆期間中は毎日朝晩に取り替えてください。

その他、お茶・お花・ぼんぼり・灯籠・お供えもの・果物・お菓子・だんごなどを適宜お供えします。

そして、線香立て・蝋燭立て・お線香・リン(鐘)などの仏具を用意します。
お盆棚の上段は結界で囲まれた聖域なので、お供えもの以外はあまり置かず、仏具は棚の前に机などを置き、その上に用意します。その方がお線香を立てたりリンを鳴らすにも都合が良いと思います。

なおろうそくや線香は、お盆期間中ずっと点けておく必要はありません。火事の危険がありますので、棚の前に誰もいなくなるときは安全のため必ず消してください。
電気式のちょうちんやぼんぼりは、夜になったら寝るまでの間点けておくと良いでしょう。

また、お寺にお願いして書いてもらった塔婆(とうば・卒塔婆のこと)があれば、お盆棚の横に立てかけます。

 

なお、これは参考までにお寺の本堂に設けたお盆棚(施食棚)です。本尊さまがおられる北とは逆の南側に、北を向けて用意し、ご本尊さまを背にして読経します。

お寺のお盆棚

お寺ではこういう一対の桶に深いおわんを入れ、その片側に水、逆側に水の子を用意します。法要の際に水を精霊に向かってふりかけるために用いるみそはぎの枝を水の上に用意しておきます。

お寺のお盆飾り みそはぎと浄水

このお寺でのお盆棚の用意を一部簡略化したのがご家庭でのお盆棚だと言って良いと思います。
なぜここでわざわざみなさんに直接関係ないお寺のお盆棚の写真をお見せしたかというと、理由があります。
各家庭ではお寺とまったく同じ規模の準備をすることは到底できません。しかしお供えするお膳だけは、ひとてまを惜しまなければ、お寺とまったく同じお供えがみなさんの家庭でもできるのです。

○まごころこもった手作りのお膳を

さて、これで亡き人のたましいをお迎えする用意がほぼ整いました。
そしてさらに、ぜひともご先祖さまにお供えするお膳を用意していただきたいと思います。
久しぶりに懐かしいわがやに帰ってきた亡き人に、まごころのこもった手作りの料理をお供えすれば、最高のおもてなし、すなわち良き供養になると思います。

故人が好きだった食べものをお供えすれば良いのですが、やはり仏さまになった故人ですから、できれば仏さまの作法にのっとったお膳をお供えしたいものです。

昔は三度三度お膳を作り替えて、自分たちが食べている食事と同じものをお供えしたのですが、今は昔と違って朝はパン、夕方はハンバーグ、という食生活の 家庭も多いと思います。お盆の三日間、毎食丁寧にお膳を用意すれば最高ですが、仕事があったり家族ででかけたりと、実際には毎食丁寧にお供えするわけには いかないのが現実でしょう。

ですから、お盆期間中に一度だけでかまいませんから、半日時間を作り、精進料理のお膳を用意してお供えしてください。そして家族みんなでお盆棚の前で同 じ物をいただき、飲み物を互いに注ぎ合いながらにぎやかなひとときを過ごし、故人の想い出話に華を咲かせるのも尊いお盆の供養です。

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