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東京のお盆~略式準備をご紹介

   

東京や一部の地域では今日7月13日から16日までがお盆期間です。

皆さん準備は整ったでしょうか。

お盆の期間がまちまちなのは、暦の新旧あるいは長い間に培われた慣習や伝統に由来します。私も永平寺東京別院で役位に就いていた折は、この時期、毎朝6時頃にお寺を出て夜遅くまでお檀家さん宅にお盆のお経をあげるために飛び回っていました。

その際感じたのは、私が育った群馬北部の田舎と東京では住環境が大きく異なるため、同じお盆といってもその準備は同じようにはできないという点です。率直に言えば、一般的に東京では群馬よりも住まいが狭いため、お盆の準備もコンパクトに調える必要があるのです。どちらが良い悪いの問題ではなく、仏事は地域の事情に合わせて行うべきものですから、当然東京には東京の準備があるのです。

当サイトではお盆の準備のしかたや、お盆棚の準備例を紹介していますが、東京の方がそれを見てもおそらくとまどってしまうことでしょう。そこで今回、私が永平寺別院時代に東京のお檀家さん宅を回った経験上、東京でのお盆準備について紹介したいと思います。もちろん、地方でもワンルームマンションなどにお住まいの方はおおいに参考になるでしょう。

 

まず「お盆棚」は「棚」とあるように、仏壇とは別に棚、すなわち祭壇を設けるのが本義です。しかし居住スペースが限られている場合、わざわざ大きなお盆棚を用意するのは難しいのが現実です。実際、私がおうかがいしていたお宅のうち、半分くらいのお宅では、スペースの関係上お盆棚やお盆向けの用意はせず、いつもどおりのままのお仏壇の前でお経をあげていました。もちろん、お寺の側からはお盆の飾り付けの例が書かれた書き物を配布していますが、それに書かれているような本格的な用意は場所的に無理ですよ…となるとはじめからもう何もしなくなってしまう方が多いのです。もちろん、特に何もお盆向けの用意をしなくても、まごころを込めて亡き方の霊に手を合わせればそれで良いのですが、やはりできる範囲で良いので形もある程度調えた方がよりこころをこめやすくなると思います。

この時期、ホームセンターやスーパーに行くと、手軽にお盆の準備ができる「お盆飾りセット」が売られています。あまり面倒な準備はしたくないよ、という方のためにまずはこのセットを使ってお盆準備をしてみましょう。仏壇前での略お盆飾り作法

こうしたセットですね。中をあけると、盆ゴザ、ハスの葉、牛と馬、箸、真菰ひも、麻がら、説明書きの8点が入っています。

仏壇前での略お盆飾り作法

仏壇前での略お盆飾り作法

付属の説明書をみても、このままだとちょっとわからない点があります。それにこの説明書きに書いてあるような準備はかなり本格的なレベルが書かれており、このセットでは大きさ的にもこの図のようには行かないと思いますが・・・

まあ一応参考にしてください。

仏壇前での略お盆飾り作法

店頭展示の際、ビニール袋の中で付属品がバラバラに乱れないよう、各品がゴザに針金で留められています。ゴザを破損しないように気を付けて外してください。

仏壇前での略お盆飾り作法

大型の仏壇なら、本体自体が180センチほどの高さになっており、下部には引き出しなど土台にあたる部分が配置されていますが、東京ではそこまで大きな仏壇がある家は少数派です。

私が回っていた東京方面のお檀家さんの家では、タンスやチェストなどの上部に小型の仏壇を置いている家が多かったので、まずはそうした場合のお盆の用意についてお話しします。

仏壇前での略お盆飾り作法

仏壇の前、つまりタンスの前に、こうした「経机」「前机」という仏事用の机を置きます。

豪華な装飾がほどこされたものは当然ながら高価ですが、このような木目調のものならば1万円程度です。折りたたみ式でふだんしまっておけるものもありますし、お盆以外でも親族などが集まってお仏壇の前に何かお供えしたいときや、仏事などに使えますのでひとつはあった方が良いと思います。

仏壇前での略お盆飾り作法

経机の上に真菰(まこも)の盆ゴザを敷きます。もうこれだけでだいぶお盆っぽい印象になりますね。

仏壇前での略お盆飾り作法

このビニール製のハスの葉ですが、本来はこの上に「みずのこ」とよばれるお供えを用意する際に下に敷くためのものです。これは付属の説明書きには書かれていない品です。

お盆飾り みずのこ 水の子

(みずのこについてくわしくは当サイト記事こちらをご参照ください)

可能ならば、みずのこを用意してこのハスの葉を敷いてお供えします。

しかしながら、東京の猛暑でみずのこを用意しても、一日仕事で外出して帰ってきたら、ワンルームマンションの場合は高温の室内ですぐ傷んでしまいます。その場合は無理をせず、このハスの葉の上に傷みにくい果物など、お供えの品を置くことで代用してはどうでしょうか。そんなのおかしい、と思う人もおられるかも知れませんがあくまでも自分のできる範囲での準備で良いと思います。

仏壇前での略お盆飾り作法

セットの中の箸は、みずのこに添えるための箸です。果物で代用する場合は特にいらないことになってしまいますね。これまた説明書きで触れていないので扱いに困りますね。

仏壇前での略お盆飾り作法

真菰で作られた牛と馬です。ご先祖様や死者の魂が、馬に乗ってあの世からやってきて、牛に乗って帰って行くといいます。おそらく右の赤い方が、長いしっぽがあるので馬でしょうね。牛と馬のどちらを右に置くか、これは率直に言うと仏教的には決まりはありませんので、どちらでも良いです。何か家に言い伝えがあればそれを守れば良いでしょう。(まあ、その根拠は誰かがそれらしく言いだしたことだと思うので、ケンカしてまで右左を論ずるほどのことではないと私は思います)

これまた、ナスと胡瓜で作るのが旧来の作法ですが、東京の暑い室内ではお盆期間中に腐ってしまうため、このような素材で作られた牛馬で良いと思います。もちろん、可能ならば牛馬をキュウリとナスで作っても良いですよ。

仏壇前での略お盆飾り作法 仏壇前での略お盆飾り作法

さあ、これで最も簡単なお盆準備が調いました。所要時間、約5分です。

なお経机さえ置く場所が厳しいと言う方はこうしてはどうでしょうか。

お盆の用意 略式 東京

仏壇前での略お盆飾り作法

多くの小型仏壇では、写真のように、仏壇下部で赤く囲んだ部分が引き出せて、臨時の棚として使えるようになっているものが多いです。あまり重いものを置いたり、常用することは避けた方が良いと思います。引き出しすぎると外れて落下することもあるのでよく確認して下さい。

仏壇前での略お盆飾り作法

この引き出した部分に、経机においたものをそっくり置けば、経机は不要です。ただしぶつかったりして落ちたりする危険があるので充分ご注意下さい。

仏壇前での略お盆飾り作法

セットに入っている麻ガラは、折るかノコギリやキッチンハサミなどで5センチくらいに短くし、迎え火・送り火として使います。何本か束にして火をつけ、13日に焚いて亡き人の魂を家に迎え、16日にふたたび焚いて送り出します。

このセットの量をすべて焚くとちょっと多いですね。特に東京では、マンションの玄関先やベランダでやたらに火を焚くと規約違反や近所迷惑になる場合もあるので気持ちだけ、ということで略しても良いでしょう。あるいは家で焚かず、お墓参りに行った際に墓地のはずれなどで焚くことで替わりとするのも良いでしょう。

なおキュウリやナスで牛馬を作る際は、これを使って脚にすると良いですね。

仏壇前での略お盆飾り作法

もう一つの付属品、真菰の縄です。これは笹などを棚の隅に立ててこの縄を回し、結界を作るためのものですが、そもそも東京で笹を用意するのはなかなか難しいですから、略式の準備では特に使わなくても良いと思います。近くに笹がある場合は使ってもよいですが。

それでもせっかく付属しているのだから、というなら仏壇の上の方にかけて雰囲気だけでも出すか、ヒモの隙間にそうめん、お花、昆布などをはさんでぶら下げればなお立派になります。

仏壇前での略お盆飾り作法

これでお盆セットを使った準備が調いました。

仏壇内部は特にいじることなく、仏壇の前に小物を揃えることで、お盆らしい雰囲気を出すことができると思います。

もし、この真菰のゴザに似た感じのものが単品で入手でき、牛馬はナスとキュウリで作るとすれば、このセットを買わなくても似たような配置はできると思います。

え、こんな簡単な準備で良いの!と思うかもしれませんが、何も用意しないよりははるかに良いと思います。本格的な準備などしている時間がないよ、という方はこれだけでも充分なので、「うちは狭いから…」「忙しくて…」「田舎のような準備はとてもじゃないけど無理」など、言い訳ばかりしていないで、ぜひお盆らしい準備をして、ご先祖様や亡き方の霊をお迎えして、こころからの合掌で供養していただきたいと思います。

もしお子さんがおられれば、仏壇の前がいつもと違うことに気がつくでしょう。「今日からお盆だからね、ご先祖様に手を合わせて日々暮らせることへの感謝をしましょうね」と伝えることができれば何よりの幸せではないでしょうか。

 - お供え膳を作る前に~基本的知識

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